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5−2−2 評価、分析
【1】漁業経営の収益性
北海道における漁業経営は極めて厳しい現状にあることが、ヒアリング調査によって改めて確認される結果となった。漁業関連諸機関のヒアリングを通じての新造漁船に関するいわゆる”景気のいい話”は極めて少なかった。漁業経営の厳しい実状を勘案すれば当然の帰結でもあろうが、そうした中にあって強く感じられたのは、地域あるいは対象とする魚種、漁業種類による漁業経営上の歴然たる格差である。厳しい漁業経営の実状の方が圧倒的に多いのであるが、少数ながら極めて良好な経営を維持している地域や漁業種類も確実に存在しているのである。経営状況の良好な地域にあっては、北海道全体が趨勢的な漁船建造の減少傾向の中にあっても、着実な新規投資を続けているのである。
今回の調査研究の趣旨から勘案すれば、技術開発もさることながら当面は実際の需要者である漁業者の、漁船の建造なり設備の更新・拡大に関しての資本力、換言すれば、設備投資を行えるだけの漁業経営に関する収益性の有無を十分吟味する必要があると考えられる。
従って、いささか本末転倒のきらいはあるが、現実問題として漁船及び関連装置を買ってもらわないことには如何ともしがたいわけで、今回の開発テーマを検討するに当たっても、その意味から、漁業者の新造船建造意欲や投資体力・資本力は重要な要素とすべきである。
【2】有用性と開発の効果
今回のヒアリング調査では、漁船及び関連装置に関する技術的な開発動向についても幅広く情報収集すべく実査を進めたが、関連装置や漁具等に関する技術開発の事例は多かったものの、率直なところ漁船そのものの新しい開発に関する動静はそれはど多くはなかった。
今回は「漁場の自主的な管理・保全」「作業の効率化・省力化」「漁獲物の高付加価値化」の3つの観点から調査を進めてきたが、これらの観点は北海道の水産業の現状及び将来を見越して、いずれも重要なことである。
北海道の漁業が厳しさを増す中にあってこそ、北海道の造船業界としては、これらの観点を通した、漁業者にとって有用で開発効果の高いテーマに果敢に取り組む必要があるものと考えられる。ヒアリング調査を通じて、漁業者サイドからのニーズは種々収集してきたわけだが、それらのニーズを改めて漁業者にとっての有用性、開発の効果という観点から評価することは極めて需要であると考えられる。

 

 

 

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